VJサークルを作った話

そもそものきっかけは,お店の営業をどのように改善したらいいのかという話だった.いつもVJをやっていた,クラブと居酒屋の間のような店舗の経営者の人にお酒をごちそうになった際に,店舗の売り上げを伸ばすためにVJサークルを作ろうという話に至った.論理が破綻している気がするけれど,お店で活動するサークルを作ることによって学生からの認知度があがって来店につながるという一応の建前はある.ある種の本音としては,経営者の人もVJとして今も活動している人なので,関西のVJカルチャーを盛り上げたいという気分もあるようだった.僕自身のモチベーションとしては,自分がVJをやるときに一人で一晩中やっていてもしんどいし,3人くらいで交代しながらやりたいので一緒にVJをできる相手が欲しいと思った事が一番大きいんだろうか.あとは情報系の人や美学を研究している人が学内にいるので,そういった人たちを巻き込んで何かをしたら面白そうだなという事を思ったことも理由の一つではある.まあ,いくつかの利害関係が悪魔合体してサークルが生まれたことは間違いない.

とまれ,この3月にとりあえずサークルを作ると宣言して,サークル大百科なる新入生向けの広報誌に3000円を払ってA5サイズの広告を出すところからスタートした.それから新入生向けの勧誘活動のほとんどをさぼっていた.対面での勧誘はおろか,ビラ巻きすらも全くやっていない.3月に作ったTwitterアカウントは新入生をフォローしすぎて凍結の憂き目にあうなど幸先が悪い.SNSを通じた空中戦は分が悪いと踏んで,例の居酒屋でイベントを開くことになる.

イベントはまあまあの盛り上がりだった.いくつか物足りない点はあるものの,今のところは滑ったと認識することをぎりぎり回避しながら,まだこの先の活動に希望が持てている.エントランスを無料にしていたのでほとんどただ働きになっていた割にはしょっぱい戦績だったけれど,それでもいくつかの人の助けのおかげで何とか首の皮一枚で食いつないでいる感じではある.一番助けられたのは,たまに僕がVJをやっている大学の寮のクラブの運営の人ががInstagramでシェアしてくれたことで,それを見て足を運んでくれる人が多かったので大変助けられた.ほかにも一緒にサークルを立ち上げた人がTwitter強者なので,その人にリツイートしてもらったことによって新入生の目に触れられたこともありがたかった.

しかしながら,いまだ本来の目的であるVJを増やそうという事についてははかばかしくない.サークルに興味を持ってくれる人の大半はDJをやりたいと言っている人だし,実際僕がサークルとして手を動かしていることの大半はSNSを用いた広報,こまごまとした調整の仕事くらいであって,その意味でVJサークルはDJサークル,もしくはイベントサークルであるというのが実態なのではないかと思ったりする.まあしばらくはイベントを続けてみて興味を持ってくれる人がいないか探してみよう.だるくなったらまた別の方法を考えてみることにする.

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VJを始める上での参入障壁は,パソコンやVJソフトなどの機材を購入することと,クラブに友人を作ることである.この二つが同時そろう事の難しさについては勧誘の過程で感じていて,前者を満たすギークな人々はあんまりクラブカルチャーとの相性がよくない気がする.僕自身はどちらかというとこの前者に属していて,VJを始めるにあたっては技術的にはそれなりにわかる状態になってからも,人間関係の中でどんなムーブをしたらVJを始められるようになるのかわからない状態ではあった.このサークルの目的の一つは,後者の参入障壁を壊すことではあって,その意味ではギークな人たちが入ってきやすいような雰囲気を作ることに少しだけ気を使いながらフライヤーとかSNSをやろうと思ったりしているが,それが機能しているのかという事はよくわからない.願わくば,テニサー的価値観が跋扈するサークルにならないことを祈るばかりである.

今後やりたいことを個人の感想の範囲で書いておくならば,月1くらいでメトロでイベントを開きたい.暗くてマッピングの自由度がある場所でやりたい.おそらく土日の昼イベとかで健全な雰囲気のもとがいいのかなと思ったりしている.あとはジェネ系のVJを増やすための活動もしたい.既にクリエイティブコーディングと称して木曜にもくもく会みたいなことをやっているけれど,そちらについては関わっている人は別ではあるので,別にサークル化するかもしれない.そちらと共催でTouchDesignerだとかGLSLのシェーダーだとかのチュートリアルを一般の学生向け,もしくはそれなりに広く参加者を募って行えたらいいと思ったりする.あとは,美学だとか哲学を専攻している人たちを巻き込んで書籍の輪講だとか批評とかをやりたいと思ったりもしている.VJのカルチャーとかで有識者につなぐこともできるだろうから,修士論文を書いたら書籍化くらいはできるのではないかと思ったりするんだけれどどうなんだろうか.ちょっとニッチすぎるので難しい気がしてきた.

後は京都でVJをやるという境界条件を考慮に入れたときに,何をやるべきかという事を少しだけ考えている.おそらくは芸術であるし,伝統芸能であるし,社会運動なのだろう.東京であればアイドルとか,VTuberだとか,広告だとかの仕事を通してお金を集めることが正しいムーブなんだろうと思うけれど,京都においてはおそらく異なっている.いろいろ一人で考えていることはあるけれど,とりあえずは今の活動が軌道に乗るまでぼちぼち取り組んでいく所存ではある.